愛知県一宮市と能美市に生産拠点を持つ繊維整理加工会社の尾張整染は、「たゆまぬ技術開発」をモットーに、独自の加工技術を駆使して自動車内装材、産業資材、インテリアなどマルチな分野で商品展開している。中でも石川工場が主力とする自動車内装材については、国内シェア1位のトップメーカーであり、急拡大する電気自動車(EV)向け市場でも攻勢をかける構えだ。
車両内装材への特化が奏功
尾張整染石川工場のルーツは1947年に設立された繊維加工業の大聖寺精練株式会社。1951年に帝人株式会社の傘下に入ったが、繊維業界の荒波に翻弄され、紆余曲折を経て、2010年に一宮市に本社・工場を置く尾張整染との統合により、その石川工場として再スタートした。
機を同じくして尾張整染自体も、繊維業界の名門企業である住江織物株式会社(東証プライム上場、資本金95億5,400万円)のグループ会社に加わり、経営基盤が大幅に強化された。
事業内容はポリエステルをメインとした自動車・インテリア・アパレル生地の染色整理加工だ。具体的には自動車内装材(シート生地、天井材生地など)をはじめ、電車・バス用、産業資材用、寝具用、家電用などの生地、カーテン、パーテーション、ラビングクロスなどを生産している。「確かな技術をあらゆる分野へ~繊維加工技術の未来を切りひらく~」のスローガンどおり、技術開発力には揺るぎない自信を持つ。
石川工場は再スタートを機に電車・バス用も含めた車両内装材に特化した。これが功を奏し、それまでの赤字体質を脱却して黒字転換を果たしたばかりか、全社の約60%を生産する車両内装材の主力工場となっている。
「本社工場、石川工場とも基幹設備はもちろん、それぞれに特徴のある加工設備を備えており、全方位対応ができることと、すべての製品を自社開発していることが当社の強みです。特に石川工場は自動車内装材の加飾加工を得意とし、プリント、エンボス、起毛、光沢ほか多様な技法による多彩なデザインの生地を生産しています」(新實社長)
全社に食い込みシェア30%
国内では数社がしのぎを削る自動車内装材業界の受注競争はすさまじい。自動車メーカーは通常、発売4年前に新車開発プロジェクトを立ち上げるが、ほぼ同時に内装材メーカーの開発競争も一斉にスタート。試作品のプレゼンテーションコンペが繰り返されて候補が段々絞られていき、最終的に勝ち残った1社のみが受注を獲得できる。
選定基準は新車のコンセプトを体現するデザイン、機能、品質などに加え、当然ながらコストも重視される。しかも、メインシート、サイド材、カマチ材、天井材など用途ごとにコンペが行われるため、1車種全体を独占できる例は滅多にない。
「究極的には技術力が決め手になる世界なので、常に新しい生地や加工技術の開発に挑戦し続けています」(新實社長)
最新のニーズを把握し、新たな加工技術を開発・発信するため、本社工場で加工技術展示会を隔年開催している。日本最大級の異業種交流展示会「メッセナゴヤ」に毎年出展しているのも同じ狙いからだ。
こうした努力を続けた結果、尾張整染は国内の全自動車メーカーに食い込むとともに、30%強のシェアを占めるトップ企業になった。天井材に関しては実に約80%のシェアを誇るガリバー企業でもある。
SDGsも積極的に推進
現在、最重要課題に位置づけて全力投球しているのは、国内でも導入が加速しているEVにフィットする内装材の開発だ。EV市場は今後も拡大が確実視されており、内装材業界でも主戦場の一つになっていく可能性が高い。新實社長は「EVの内装材はエンジン車とは異なるデザインやテイストが求められ、軽量化ニーズも強い。EVのコンセプトに合った生地の開発は待ったなしであり、総力を挙げて新商品を開発・提案していきます」と意気込む。軽自動車用で量産化にこぎつけるなど早くも成果が出始めており、EV向け市場でのフロントランナーを目指す石川工場の開発・生産現場は活況を呈している。
並行して、事業の継続性を見据え、SDGsにも積極的に取り組んでいる。SDGsが掲げるの目標のうち、「すべての人に健康と福祉を」「働きがいも経済成長も」「産業と技術革新の基盤をつくろう」「住み続けられるまちづくりを」「気候変動に具体的な対策を」についてはすでに実践しており、今後も取り組みを加速する方針だ。特に重油ボイラーのLNG仕様への転換、蒸気設備の効率化、大量の水を必要とする染色機の省水化など省エネ型設備への投資を強化している。
存分に活躍できるフィールド
石川工場は日本海にほど近い、豊かな自然と歴史に彩られたエリアに立地している。工場建屋は改修が進み、整理・整頓も行き届いた安全かつ清潔な環境になっている。ボウリング大会やバーベキュー大会など社員交流イベントも活発だ。若手社員からは「ていねいに教えてくれるやさしい先輩が多く、働きやすい」という声が多く聞かれる。実際、社員の定着率は高く、女性社員も約3分の1を占めている。
処遇については、給与体系以外は上場企業である住江織物の制度に準じている。3交代制の生産部門は深夜勤務の残業割増率を50%とするなど手当も手厚い。社員教育は住江織物グループの合同研修に参加しているほか、工場内研修でも住江織物グループのハイレベルな教育ツールを活用している。
人事ポリシーは徹底した「実力主義」。学歴・職歴を問わず、成果を挙げた者が正当に評価・処遇される。土橋宏和石川工場長は「大きな企業ではありませんが、社風も含め、存分に活躍できるフィールドができています」と石川工場の魅力をアピールする。
新實社長は「大聖寺精練創立以来、75年余にわたって磨き上げてきた加工技術と、新たに開発した独自技術を、変革著しい自動車市場のニーズに迅速かつ的確にマッチングさせることで、石川工場の未来は大きく開けると確信しています」と熱く語り、次代を担う強い気持ちを持った独創性あふれる人材のエントリーを期待している。
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