「オートバックス」 のフランチャイジーとして石川県内で10店舗を展開する和希は、車検・整備なども含めた県内カー用品市場でシェア1位に君臨している。今後はさらに店舗を増やす一方、42万人の会員を擁する強みを活かして、新たなビジネスにも乗り出す構えだ。自らの意思でキャリアアップに挑戦できる「チャレンジ制度」 の導入で社員の士気が高まり、職場は活力がみなぎっている。

休業中も見限らなかった顧客

 2024年元日に発生したマグニチュード7.6、最大震度7の「令和6年能登半島地震」。能登地区を中心に石川県内は未曽有とも言うべき甚大な被害を被った。和希がフランチャイズ(FC)展開する「オートバックス」の七尾店と輪島店も床や壁にひびが入り、休業を余儀なくされている。両店合わせて年間数億円の売り上げがあったので、経営的に深刻なダメージを受けることが予想された。

 しかし、案じたよりは売り上げダウンは少なかった。七尾店・輪島店の顧客の多くが、代替店として羽咋店、かほく店、スーパーオートバックス金沢店、金沢入江店、スーパーオートバックス金沢野々市店などを積極的に利用してくれたからだ。奥能登からわざわざ足を運んだ人もいれば、金沢市周辺に避難していた人もいる。いずれにせよ、オートバックスがいかに顧客から信頼されているかを物語るエピソードだろう。

 「2店休業中も見限らず、オートバックスをご利用くださったお客様には感謝しかありません。地域に密着しながら満足いただける商品やサービスの提供に励んできて本当に良かったと思います」(山口武社長)

「チャレンジ制度」で士気高揚

和希のルーツは、室本隆輔初代社長が1957年に二輪車・自動車部品商として輪島市で創業した大同部品商会だ。法人化して大同用品(現大同)に衣替えし、1976年に1号店のオートバックス七尾店をオープンした。2年後にFC展開に特化した和希を設立し、果敢なドミナント出店で2013年までに奥能登から南加賀まで10店舗を開設、県内カー用品業界のトップに躍り出た。このうちフラッグシップ店のスーパーオートバックス金沢店は、東京資本の企業から取得した店舗で、これにより県内のオートバックスは和希が独占的に経営することになった。
 創業者の女婿である山口現社長が三顧の礼で専務に迎えられ、1年後に3代目経営者に就いたのは2014年。トップシェアながら薄利多売色が強く、収益力に乏しかった経営から脱却すべく、就任早々、大改革に着手した。
 まず取り組んだのは社員教育の徹底だった。「接客業」の観点から、顧客満足度を高めるための意識改革とスキルアップに全力を注いだ。
 一方で、能登ゆかりの社員が多いことによる「勤勉だがおとなしい」企業風土を刷新しようと、「チャレンジ制度」を導入した。例えば店長やフロア長・ピット長といった幹部ポストを目指すなら、自ら申し出て、設定課題をクリアすれば昇格できる仕組みだ。キャリアアップを「与えるもの」から「勝ち取るもの」へとパラダイムシフトさせたとも言えよう。並行して給与体系を成果本位に改め、役職手当も大幅に拡充、店長の権限も増やした。
 その結果、社員のモチベーションが顕著に高まり、近年は社員の60%が何らかのチャレンジに手を挙げるようになった。その分、ポストも増やし、社員約170人の3分の1が役職者に登用されている。

他を圧倒する42万人の会員


 オートバックス会員の拡大も重点戦略に位置づけ、説得力の高い接客術を駆使して会員数を大幅に増やすことに成功した。県内の運転免許保有者は72万人ほどだが、現在では実に約42万人の会員を擁する。CMとDM戦略も見直し、最近はAIを活用してより効果的なDMを打てるようになったこともあり、年間約50万人が来店している。
 「当社の最大の強みは圧倒的な会員数です。カー用品販売だけでなく、車検・整備や車の売買などカーライフ全般をサポートする態勢も強化しており、今後も顧客1人当たりの付加価値を高められるとみています」(山口社長)
 加賀地区でさらに2店舗を新規出店する計画もある。ただし、中長期的にはオートバックスビジネスだけでは頭打ちになる可能性も想定される。そのため、まだ構想段階だが、グループ企業の大同による新ビジネス進出も検討し始めている。山口社長は「どんな業種であれ、オートバックス経営で培ったノウハウと会員数の多さを武器に、引き続き地域密着型ビジネスを目指すことになるはず」と展望している。

「チャレンジ制度」で士気高揚


 和希のルーツは、室本隆輔初代社長が1957年に二輪車・自動車部品商として輪島市で創業した大同部品商会だ。法人化して大同用品(現大同)に衣替えし、1976年に1号店のオートバックス七尾店をオープンした。2年後にFC展開に特化した和希を設立し、果敢なドミナント出店で2013年までに奥能登から南加賀まで10店舗を開設、県内カー用品業界のトップに躍り出た。このうちフラッグシップ店のスーパーオートバックス金沢店は、東京資本の企業から取得した店舗で、これにより県内のオートバックスは和希が独占的に経営することになった。
 創業者の女婿である山口現社長が三顧の礼で専務に迎えられ、1年後に3代目経営者に就いたのは2014年。トップシェアながら薄利多売色が強く、収益力に乏しかった経営から脱却すべく、就任早々、大改革に着手した。
 まず取り組んだのは社員教育の徹底だった。「接客業」の観点から、顧客満足度を高めるための意識改革とスキルアップに全力を注いだ。
 一方で、能登ゆかりの社員が多いことによる「勤勉だがおとなしい」企業風土を刷新しようと、「チャレンジ制度」を導入した。例えば店長やフロア長・ピット長といった幹部ポストを目指すなら、自ら申し出て、設定課題をクリアすれば昇格できる仕組みだ。キャリアアップを「与えるもの」から「勝ち取るもの」へとパラダイムシフトさせたとも言えよう。並行して給与体系を成果本位に改め、役職手当も大幅に拡充、店長の権限も増やした。
 その結果、社員のモチベーションが顕著に高まり、近年は社員の60%が何らかのチャレンジに手を挙げるようになった。その分、ポストも増やし、社員約170人の3分の1が役職者に登用されている。