常識にとらわれない

ブランド名に店づくりに込めた思いが如実に表れている。能登から加賀まで石川の魅力を余すことなく提供する――。このコンセプトのもと、金沢市内に5つの飲食店と、1つの物販店を展開している。
とはいえ、一つひとつの店はメニューも違えば、店のデザインも異なる。例えば、金沢駅に隣接するクロスゲート金沢2階に構える「市」は県内にある35の酒蔵の銘酒を取りそろえ、地酒に合ったメニューが並ぶ。一方、近江町市場にあるのは、のど黒釜飯専門店「と成屋」と、旬の魚介がてんこ盛りの「市場屋」。金沢駅近くの「郷」はおばんざいが中心で、三井ガーデンホテル金沢1階の「万庭」は能登牛と能登豚のしゃぶしゃぶが看板メニューだ。出店コストを抑えるために同一メニュー、同一店舗レイアウトでの水平展開も考えられるが、グループの伊勢真樹代表は「コンセプトは共通させながら、金太郎あめのような店舗展開はしたくなかった」と断言する。
さらに、各店で提供するふるさとの魅力は、旬の食材だけにとどまらない。豊かな発酵食文化の中で培われた醤油や味噌、能登の揚げ浜塩などの調味料に加え、器も輪島塗や九谷焼、山中漆器を取りそろえる。「すべての料理を伝統工芸の器で召し上がっていただくお店は、あまり多くありません。業界の常識には沿っていないかもしれませんが、それが強みでもあります」と伊勢代表。学習塾の経営という異分野から飛び込んだからこそ、固定観念にしばられず理想の店づくりを追い求めてきた。それが繁盛店を生み出すポイントにもなっているようだ。

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